著者:小川晴央
イラスト:
出版社:メディアワークス文庫
人の本音が声の色なってわかってしまう男の子の主人公。
幼少期から当たり前のように声の色が見えていた彼。やがてそれが特殊な能力であることに気づきます。
人の感情が声の色となって分かってしまうって一見便利そうですが、両親の不安なんかを幼心に察知してしまったり、友達の表と裏が声の色として分かってしまったり、見なくてもいいものが見えてしまう苦しさというものがあるのも確か。
美大生になった彼の前に失語症で声がでない一人の女性が現れます。声の色を気にしなくていい彼女の登場。そして、先輩に頼まれて映像制作をやっていた主人公に、手伝う代わりに彼女の姉の歌った音源を用いて映像を作ってほしいとお願いします。
そんな彼女に主人公はだんだんと惹かれていくのですが、実は彼女は現在失語症は治っていて声がでないという嘘をついて主人公に近づいたのでした。
彼女の姉は既に死んでいます。彼女が過去に失語症になるきっかけとなった事件、そして亡くなった姉の歌を使って映像を作ってほしいとお願いした本当の理由。そんな切ない人の関わり合うという嵯峨が描かれた物語だと言えると思います。
声が出ないという彼女の声の色を知ることはできない訳ですが、そんな彼女に惹かれた主人公は彼女の心の色を知らいたいと思うようになるのですね。 まぁこれって惹かれてしまうという事だと思いますが・・・ そんな彼女には実は嘘があって、その真相はどうなの?と気になる物語です。男性の淡い恋心の切なさと、嘘をついてまで男性に近づき願いを兼ねようとした少女の切なさとも相まってジーンと来る作品なのではないでしょうか?
君の色に耳をすまして (メディアワークス文庫)
発売日:2015/8/25
あらすじ(Amazonより):声の色が見える僕は、透明な君に恋をした。『僕が七不思議になったわけ』の著者最新作!
芸大に通う杉野誠一は"声の色"で見たくもない人の感情や嘘が見えてしまうことに悩まされていた。そんな彼がキャンパスで出会ったのは声を失った透明な女の子。
『川澄真冬』と書かれたメモ帳で自己紹介をした彼女は、誠一の映像制作を手伝いたいと申し出た。不審がる誠一の前に、古ぼけたカセットが置かれる。そして、彼女は手伝う条件として、テープに録音された姉の歌を映像に入れて欲しいという。
声の色を気にせず話せる彼女に惹かれ、生まれて初めて心の色を知りたいと願う誠一。だけど、彼女の透明な色には秘密があって――。
シエル: 声が出ない少女だとか、筆談で思い伝えるようなヒロイン像ってどこか透明で穢れの無い幻想をいだかさせてくれるもの。実際失語商となった妹なのですが、亡くなった姉の事を思いながら主人公の男性に近づくい訳はなんなのか?ある種のミステリーの深層とほろ苦い惹かれ合う心のありようなんかが化学反応を起こしながら、最後に「あっ」というネタバレ展開に期待ができる作品なのではないでしょうか?
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