著者:小川 一水 (著)
イラスト:
出版社:ハヤカワ文庫JA
26世紀人類は謎の自己再生型のロボット兵器(ET)により地球を滅ぼされたという事実だけが残る世界。ETというのは謎の増殖型の戦闘ロボットであり機械生命体みたいなもので、誰がつくったかも明らかでないのですが、ただ人類を滅ぼすためだけに存在しています。
90%以上の人口を失い、太陽系の別の惑星へ避難せざるを得なくなった人類は未知の脅威に対抗すべく人造人間を開発します。生殖機能は持たず成長はしませんが、自我を持ち、人類を問う時存在として認識して「守るべきもの」を守るために、ETが仕掛けた「時間遡行(じかんそこう)」という過去にタイムリープして、まだ科学力をもっていない人類を倒す手段をとるまでにい至ります。そして人類によって開発された人造人間(メッセンジャー)は過去へと旅立ち、時間が紡ぐ歴史を人類にとって有利な方向に変えようと、歴史の枝木をイベントを作りながら、歴史の流れが人類にとっていい形となり、未来からの吉報を待ちながら闘い続けるのですが、そんな事情を知らない文明社会は、国益や思惑などで、利害が一致せず、あえなくETに滅ぼされてしまう愚かな人類。
そうして、数々の時代のミッションを失敗し、とうとう邪馬台国の時代まで時間遡行します。
自我を持つ人造任げは製造された26世紀の時代、彼に人間や歴史について深く教え、そして主人公の人造人間の事を好きになってしまったサヤカという女性がいました。彼女を通して、「守るべき存在」というものを理解し、それを守るために時間遡行を繰り返しながらETと闘っていた主人公。しかし、何度も何度も失敗し、時間遡行を繰り替えす中で、自分が思いを寄せるサヤカを助けることができないかもしれない、うまくいっているはずならば、26世紀以降の未来からお応援が来るはずー。と思い悩むようになります。うーん、この辺りはSFですね。
確かに未来が代わっていればそうなりますが、ただ、歴史をかえてしまうと、変えなかった歴史はそのまま続き、変わった歴史は違ったタイムラインとして流れがはじまるという平行宇宙的な考え方もあったりするので、この辺りは理屈を考えながら物語を読み進めてしまうというのはSFの醍醐味だと言えますね。
で、西暦200年代まで遡り、邪馬台国の時代まで時間遡行して出会った少女が、邪馬台国の女王となった少女卑弥呼。この時代までさかのぼると、古代から伝わる終末伝説というものがたまたま存在し、世界にいずれ訪れる災いの事がすんなり受け止められるという事、そして、人造人元である彼を女王である卑弥呼が自分たちを救う神であると認識してくれるんですね。そして、女王である卑弥呼は、人造人間である主人公を王として迎えて、厄災(ET)へ立ち向かう訳です。
この辺りは映画ゲートなんかのモチーフにもクロスしますが、壮大なSFオペラ的な流れと、古代終末世界の中で、王となり英雄譚を紡ぐという展開のボリューム感は読者のモチベーションとしては最高潮に達する部分だと言えると思います。
ただ、冷静に、科学的に考えると、古代まで、遡り、今だ未来で人類が巻き返したであろう兆候など主人公の人造人間が知る由もありません。
26世紀の人類が滅びてしまったんだろうか思い悩む主人公。ひょっとして守るべきものも、帰る場所ももはや未来に存在しないかもしれない・・・そんな中で、女王にただ祭り建てられ、周りに王を演じつづけていた卑弥呼こと、ミコと呼ばれる少女は、王に迎えた人造人間に思いを寄せていくことになるわけですが、思いを残してきたロストワールドな未来と古代まで時間遡行した挙句出会った人物との間で生まれるまた懐かしい感覚と・・・そんな物語の終末はどうなるのか?読み応えある作品だと思います。
時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)
発売日:2007/10
あらすじ(Amazonより):現代よりも遥か未来・26世紀の地球。 どこからやって来たのかもわからない謎の侵略者・ETによって地球が壊滅させられ人類が絶滅寸前まで追い詰められた世界。(ETは「Extra Terrestrial」の略称だが、後に「Enemy of Terra」とも呼ばれている) その世界で、オーヴィルは人類を守るべく戦うための人造人間メッセンジャーとして創られ、誕生した。 オーヴィルの生まれた時間枝の世界は「未来からの援軍が来ない」事で近々滅亡する事が確定した世界。加えてオーヴィル達メッセンジャーは、ETを殲滅しても戦いに生き延びても、そしてその果てに人類が滅亡しない未来を勝ち取ったとしても歴史改変の影響を受け元いた世界へは二度と帰れない。 そんな中、「どんな事をしてでも人類を救え」という命令を遂行するために、幾重にも分岐していく時間枝(=パラレルワールド)やそれらの世界が滅びていく哀しみを背負いながら人類が滅びない歴史を辿る一本の時間枝を守るために孤独な旅を続け戦い続けるオーヴィルと、その彼が「使いの王」として訪れた全人類史の存亡を賭けた最終防衛線たる時代、古代邪馬台国の若き女王・卑弥呼のストーリーを描く。 ETは何のために人類を滅ぼそうとするのか? オーヴィル達は過去へ遡るETと戦い続け、終わりの見えない戦いに疲弊しながら最後はどこへ行くのか? そしてオーヴィルと共に戦うことになった卑弥呼は、邪馬台国と自らの住む時間枝をETから守れるのか?
シエル: 大きすぎる背負うべきもの、そのはざまではぐくまれ、実らない恋心・・・。思うようにうまくいかない現実。なんというか、人生の縮図みたいなのがこのSF物語には集約されているようなそんな感じがする作品です。
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