著者:三秋縋
イラスト:
出版社:メディアワークス文庫
大人になると、「惚れた腫れた」という衝動的な恋への行動というものを思春期の若い人たちのものだとちょっと冷めた目でみてしまうことがあるかもしれません。特に男性は仕事をするようになるとビジネス=成果=お金という観点から合理的、効率的、費用対効果という視点で物事を見るようになるのかもしれませんが、この物語は、お金に困窮する主人公に寿命を買い取ってもらえるという話をとあるスーツ姿の女監視人ミヤギと主人公2人の掛け替えのないものとは何か?を探し気付くような物語です。
主人公の寿命の査定金額は、30万円。1年1万円の価値、寿命は30年。ふとそのとき、心の奥底で自分よりも才能があった幼馴染の女性のことを監視員ミヤギに聞くと、荒んだ人生を送っていることが分かります。主人公は、苦しいときに助けてくれなかった彼を憎んでいた彼女のお金を渡すべくデートをするのですが、頭が狂ったと思われてその場から姿を決してしまいます。幼少期からの人間関係を振り返る主人公は人生のしがなさというかそんなものを実感してゆくのですが、その後、監視員ミヤギの代わりに交代になった新たな監視員と会うことになり、実は自分の寿命が30円で、30万円はミヤギの自己満足で支払ってくれたことを知る主人公。
この世の存在でないミヤギは実は主人公と同じように両親の負った借金のために寿命を売り払って監視員というつらい仕事をしている事を知り、ミヤギの為に残り少ない寿命を使うことを決意する主人公。
そんな主人公と通じた監視人ミヤギは彼女自身の寿命もすべて売り払い監視員を解放されて、この世の存在として主人公とふれあうことができるようになります。
でもお互い残された寿命は3日だけ。人生をなげうってもいいと思える本当に特別な人だと思える人と出会い。刹那時を幸福に生きる・・
なんかこう・・切ないけれど、本当の幸せってなんなのだろうかと考えさせられる作品です。
この小説は、忙しく働くようになった社会人とか、油が乗り始めた20代後半の大人の人がふと感じる人生のしがなさや時間というものの価値をお金に換算してばかりいることがあまり意味のないことなのかもしれないと気づかさせてくれる作品だといえるかもしれません。
残り余命を1年1万円で売った主人公に監視員としてつくミヤギというキャラの冷めた目。余命やお金の価値というしがらみがなくなって初めて時の価値と特別な心が通じ合う人の存在価値に気付く・・。
いろいろ空回りする主人公が結局最後に気付いた事が大切な人のために生きることみたいなそいういう本当の幸せてってとか、人生ってとか、大人なら誰でもある程度の年齢になったら考えるだろう「死ぬとき」にどう思えるか?という大人な哲学を、何気ないラノベ風タッチで入り易く書かれた作品だと言えると思いました。
発売日:2013/12/25
あらすじ(Amazonより):どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の“査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。未来を悲観して寿命の大半 を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。彼女 の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。ウェブで大人気のエピソードがついに文庫化。
かりん: 幸せってなんだろう?と考えさせられる作品です。でも登場人物のような本当に心が通じあう掛け替えの人と巡り合えたらいいなぁと思うのですが、人生そんなにいい出会いというものはなかなか巡り会えないかもしれないですね。だからこそこの物語を見るとジーンとくるものがあると思います。
SF , カテゴリ , ミステリー , ラノベ・原作 , 文芸 , 更新情報 , 青春・恋愛・ラブストーリー タグ: 三秋縋
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